一つの作品に5P投入する人はサイトもコメントもブッ飛んでおり、その作品への情熱や愛がダイレクトに伝わってきて、読んでいて楽しいと同時にハラハラします。もっと!もっとマンガへの偏執的な愛を!言葉を!というわけでコメント紹介です。

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林田さん(id:Hayashida

投票作品

美少女戦士セーラームーン』(武内直子)5P投票


指輪物語』と張り合えるだけの力を持ったファンタジーはこの作品以外に存在しない。『指輪』は父性によって、そして『セーラームーン』は「母性」によって紡ぎ出された幻想叙事詩な訳だが、『セーラームーン』は「男性性(天王はるかことセーラーウラヌス)」をも「母性」のなかに取り込んだという点が白眉。この作品を除いて90年代の漫画が語れるか。




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相川さん(id:aikawa8823

投票作品『AKIRA』(大友克洋) 5P投票


コミックは事件だ!!

殺害した子供の頭部を切り離し、中学校の校門前に放置しておく、神戸小学生殺害事件の残虐極まりないこの行為は、須磨地区の住民だけでなく、日本中の人々を震撼させた。そして約1ヵ月後。逮捕された容疑者が、14歳の少年と知るとショックの度合いはさらに深まっていた。神戸小学生殺害事件は子供による子供殺しだった。

では、何故、少年はこの事件を引き起こしてしまったのか。当時のテレビ・新聞・雑誌の報道記事から着目したいのは次の3点。(1)受験勉強や口うるさい母親など、さまざまな障害が多感な少年を抑圧する。(2)大阪万博以降に造られた新興住宅・須磨ニュータウンに生まれ育っている。(3)2年前に阪神大震災に遭い、廃墟の中で死んでいく人を何人も見ている。これら(1)から(3)と大友克洋の描くSFマンガ“アキラAKIRA”を、照らし合わせ、この少年像を浮き彫りにし、事件の真相にせまってみたい。

「舞台は2019年、核戦争後のメガロポリス東京。両親をなくした金田とテツオは、孤児院で幼い頃から兄弟のように育ってきた。兄貴分的存在の金田に何をするにもあとからついて従うテツオ。ところが、ある事件をきっかけにテツオに東京を軽々と破壊する能力が身につく。これを機会に、暴走するテツオ。全てのもの(金田との関係も含む)を破壊していく。しかし、その能力もテツオ自身がコントロールできなくなって……。」これが“アキラAKIRA”の大方のストーリーである。

ずばり、この殺害を犯した少年は、テツオではなかったか。金田とは、少年を抑圧していた日本の社会そのものではなかったか。この少年の両親や生まれ育った街の住民は、いまの時代においてなお、楽しい我が家、明るい街を望んでいたのだろう。そうしたものが幻想だと気づかぬままに。この抑圧のなかで、少年の心にやがて暴走するテツオを育てあげていたのだ。そして、阪神大震災が起こった。日本の社会は少年の前で死んでいく人々に何もしてくれない。ただ、死を待つのみ。これまで少年が信じてきた価値観の崩壊がここで始まった。何をしてもいいのではないか、と。やがて、少年は、破壊活動に目覚めたテツオになっていた。

一般的に“アキラAKIRA”は89年の社会的思想のひとつだとされているが、少年とほぼ同年代のわたしにとって90年代といえば、神戸小学生殺害事件であり、しいては新しい倫理観を享受してくれた“アキラAKIRA”の世界観であり、“アキラAKIRA”こそが、都会に残された唯一の野性であると、いまあらためて思うのだ。以上のことから大友克洋著作“アキラAKIRA”に5Pを捧げたい」




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僕も書き足りないからこれくらいの長文書くよ。